度を超えたユーモア

度を超えたユーモア

2019
木材、塗料
猿島 展望台(神奈川)

自宅近くの商店に書いてあるキャッチコピーが気になっていた。
「見つけた、本当の私。」
「本当の私」という不穏なキーワードが耳に残り、もはやジョークのようにすら思えて笑えてくる。
今の世界で、本当の私を見つけるとはどういうことなのだろうか。

太古の私たちの先祖が展望台をつくり、自然の流れや天体の運行を観測し、自分のいる場所や今の時間を知ろうとしたのは、つまるところ「自分」とは何者かを知りたかったのかもしれない。
それから時が経ち、現代の溢れかえる大量の情報の中では、かえって「自分」というものが見えづらくなってしまった。
そんな世界のなかで、誰かが考えたこのコピーを私はジョークではなくユーモアだと思うことにして、かつて使われていたこの展望台の中にしまいこみたい。

もっとも、こんなことで私の世界は変わらないのだが。

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